受発注デジタル化の進め方|EC化率45.9%の今、中小製造業が始める3ステップ
FAX・電話の受注を打ち直す手間を減らしたい中小製造業向けに、BtoB-EC化率45.9%という最新調査をふまえ、受発注デジタル化を無理なく進める3ステップと現場の変化を解説します。

目次expand_more
- 3分でわかる要点(経営者向け)
- BtoB-EC化率45.9%とは?受発注デジタル化はどこまで進んだのか
- 受発注デジタル化で中小製造業の現場は何が変わる?
- 受発注デジタル化の3ステップ
- ステップ1:取引先別に受注の経路と件数を数える
- ステップ2:受け口を取引先ごとに選ぶ
- ステップ3:受注データを販売管理・ERPに集める
- 関連事例:受注から出荷までの業務を整理し、原価を見える化
- 自社はいま始めるべき?待つべき?
- 現場では何が変わる?
- 導入の第一歩
- よくある質問
- 取引先がFAXしか使わない場合でも、受発注はデジタル化できますか?
- 受発注デジタル化にはどれくらいの期間がかかりますか?
- 今使っている販売管理ソフトは捨てる必要がありますか?
- 社員がITに不慣れでも使いこなせますか?
- まとめ
- この記事を書いた会社
「注文はいまもFAXと電話が中心」「受注のたびに事務担当が販売管理ソフトへ打ち直している」――中小製造業では、受発注のデジタル化が後回しになりがちです。一方で、経済産業省が2026年10月に公表した調査では、企業間取引の半分近くがすでに電子的な受発注に移っています。本記事では、最新の数字を手がかりに、中小製造業が受発注デジタル化を無理なく進める3つのステップを解説します。
※本記事は2026年10月23日時点の公開情報に基づいています。
3分でわかる要点(経営者向け)
- 問題:FAX・電話・メールで届く注文を手で打ち直す作業が、転記ミス、属人化、受注処理の遅れを生んでいます。
- 変わること:受注データが最初から1か所に入るようになると、在庫・製造・出荷・請求まで同じデータで動けるようになり、二重入力が減ります。
- 最初の一歩:まず取引先ごとに「どの経路で、月に何件の注文が来ているか」を数えることです。システム選びはその後で十分です。
BtoB-EC化率45.9%とは?受発注デジタル化はどこまで進んだのか
企業間取引のうち電子的に受発注された割合は、2025年に45.9%まで高まりました。
経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査」によると、2025年の企業間電子商取引(BtoB-EC)の市場規模は560.1兆円で、前年から8.9%増えました。EC化率は45.9%で、前年から2.8ポイント上がっています。
出典:経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2026年10月21日)
BtoB-EC化率とは、企業間の取引金額全体のうち、インターネットなどのネットワーク上で受発注された取引が占める割合のことです。
同調査の報告書では、電話・FAX・書面による注文や、決まった形式を持たないメールでの注文はBtoB-ECに含めないと定義されています。つまり、残りの約半分の取引には、FAXや電話、自由形式のメールでのやり取りが含まれていると考えられます。
業種別に見ると、輸送用機械(92.6%)や食品製造(86.1%)のEC化率が高い一方、部品加工や金属加工の企業が多く関わる業種は、半分前後にとどまっています。
- 産業関連機器・精密機器:EC化率50.6%
- 鉄・非鉄金属:EC化率53.1%
出典:経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」
中小企業庁も、中小企業ではFAXや電話による受発注が一定数残る一方で電子受発注への対応が進みつつあると説明しており、2021年の調査では受注側の48.5%が電子受発注に対応していたとしています。
出典:中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」
受発注デジタル化で中小製造業の現場は何が変わる?
受発注デジタル化の効果は、注文を受けた後の「打ち直し」と「確認の往復」が減ることです。
現場目線で見ると、FAXの注文書は「読みにくい数字の確認電話」「品番の書き間違い」「担当者の机に置かれたままの注文書」といった小さなロスの積み重ねになりがちです。受注データが最初から電子化されていれば、こうしたロスの多くは発生しにくくなります。
- 転記ミスが減る:品番・数量・納期を人が打ち直す回数が減るため、入力ミスによる誤出荷や納期の取り違えを防ぎやすくなります。
- 受注状況が誰でも見える:注文が1か所に集まるため、担当者が不在でも受注残や納期を確認できます。
- 後工程につながる:受注データを在庫引当、製造指示、出荷、請求に引き継げるため、「受注を受けたら工場に紙で回す」作業が減ります。
受発注デジタル化の3ステップ
受発注デジタル化は、ツール選びから始めるのではなく、「今どんな注文がどれだけ来ているか」を把握することから始めるのが安全です。

ステップ1:取引先別に受注の経路と件数を数える
最初のステップは、取引先ごとに注文の経路(FAX・電話・メール・取引先指定のWeb画面・EDIなど)と月あたりの件数を一覧にすることです。件数の多い上位の取引先が全体の大半を占めていることが多く、どこから手をつければ効果が大きいかが見えてきます。この作業はシステムがなくても、Excelで1〜2週間記録するだけでできます。
ステップ2:受け口を取引先ごとに選ぶ
2つ目のステップは、取引先の事情に合わせて「注文の受け口」を選ぶことです。すべての取引先に同じ方法を求める必要はありません。
- EDI(電子データ交換):EDIとは、企業間で注文書や納品書などのデータを決まった形式でやり取りする仕組みのことです。大手の取引先が専用のWeb画面やEDIを指定している場合は、それに合わせます。中小企業庁は、ITに不慣れな中小企業でも使いやすい「中小企業共通EDI」を案内しています。
- 自社のWeb受注フォーム:取引先に品番と数量を入力してもらう方法です。取引先の協力が得られる場合に向いています。
- AI-OCR:AI-OCRとは、FAXやPDFの注文書をAIで読み取り、文字をデータに変換する技術のことです。取引先にやり方を変えてもらうのが難しい場合でも、自社側だけで始められます。ただし、手書きや独自様式の注文書では読み取り間違いが起きるため、品番・数量・納期は人が確認する工程を必ず残します。
ステップ3:受注データを販売管理・ERPに集める
3つ目のステップは、どの経路で届いた注文も、最終的に1つの販売管理システムやERPに集めることです。ERP(統合基幹業務システム)とは、販売・購買・在庫・製造・会計などのデータを1つのシステムで管理し、部門をまたいで同じ情報を使えるようにする仕組みのことです。
受け口だけを電子化しても、その先で別のソフトに打ち直していては効果が半減します。受注データが在庫・製造・請求と同じ場所にあることで、はじめて二重入力がなくなります。オープンソースERPの基本はOdooとは?中小企業がERPを検討する前に知りたい基本で解説しています。
関連事例:受注から出荷までの業務を整理し、原価を見える化
DGテクノでは、部品加工・アセンブリを手がける中小製造メーカー様にOdooを導入しました。受注から購買・製造・出荷までの業務を整理したうえで、部品表をもとに原価を算出する仕組みを構築しています。
- 課題:製品ごとの原価を算出する仕組みがなく、どの製品がどれだけ利益を生んでいるかが見えなかった
- 支援内容:受注から出荷までの業務要件定義、部品表(BOM)から実際原価を算出する独自モジュールの開発、マスタデータの移行
- 期間・体制:約4ヶ月 / 4名体制
- 成果:製品ごとの実際原価と利益率を正確に把握
詳しくは部品加工メーカーのOdoo原価管理事例をご覧ください。受注データが整うと、受発注の効率化だけでなく、原価や利益の把握にも同じデータを活かせることを示す例です。
自社はいま始めるべき?待つべき?
FAX・電話の注文が多く、打ち直しや確認の電話に毎日時間を取られている会社は、ステップ1から今すぐ始める価値があります。
- いま始めたい会社:受注処理が特定の事務担当に集中している、転記ミスによる誤出荷や納期トラブルが起きている、取引先から電子受発注への対応を求められている。
- 少し待ってもよい会社:注文件数が少なく取引先も限られている、近く主要取引先がEDIの方式を変える予定がある。この場合は、取引先の方針が固まってから受け口を決めた方が、作り直しを避けられます。
現場では何が変わる?
受発注デジタル化の効果は、注文を受ける人だけでなく、工場と経営にも広がります。
- 現場作業者:Before=紙の注文書のコピーを見て作業内容を確認し、不明点は事務所に聞きに行く。After=画面やタブレットで最新の受注内容と納期を確認できる。
- 事務担当:Before=FAXを1枚ずつ販売管理ソフトに打ち直し、読めない数字は取引先に電話で確認する。After=電子化された注文やAI-OCRの読み取り結果を確認・修正するだけで登録が終わる。
- 管理者・経営者:Before=受注残や月の受注額は、担当者に聞くか月末の集計を待たないとわからない。After=受注・在庫・出荷の状況を同じ画面で確認でき、受注判断を早く下せる。
導入の第一歩
受発注デジタル化は、件数の多い取引先1社、または1つの受注経路から小さく始めるのが安全です。
- 現状を2週間記録する:取引先・経路・件数・処理にかかった時間を記録します。
- 対象を1つに絞る:件数が多く、注文書の形式が安定している取引先を選びます。
- 小さく試す:AI-OCRであれば2〜4週間のPoC(小規模な検証)で、読み取りの正確さと確認にかかる時間を測ります。PoCとは、本格導入の前に限られた範囲で効果と課題を確かめる取り組みのことです。
- データの行き先を決める:受注データをどのシステムに集めるか、既存の販売管理ソフトを使い続けるかを決めます。
AIに業務を任せるときの注意点はAIエージェント導入の注意点、メールやフォームで届いた注文をOdooに取り込む方法はn8n×Odoo連携で転記と連絡の手作業を減らす方法で解説しています。
よくある質問
取引先がFAXしか使わない場合でも、受発注はデジタル化できますか?
はい、できます。取引先にやり方を変えてもらわなくても、自社側でFAXを電子データとして受け取り、AI-OCRで読み取る方法があります。ただし読み取り結果は人が確認する前提で業務を設計してください。
受発注デジタル化にはどれくらいの期間がかかりますか?
場合によります。現状の把握は1〜2週間、AI-OCRの小規模な検証は2〜4週間が目安です。販売管理やERPまで含めて整える場合は、業務範囲によって数か月かかることがあり、参考として、部品加工メーカーのOdoo導入事例では本稼働まで約4ヶ月でした。
今使っている販売管理ソフトは捨てる必要がありますか?
いいえ、必ずしも必要ありません。今のソフトに受注データを取り込めるなら、受け口の電子化だけでも効果があります。ただし在庫・製造・会計が別々のソフトに分かれていて二重入力が多い場合は、ERPへの統合を検討する価値があります。
社員がITに不慣れでも使いこなせますか?
はい、範囲を絞れば十分に可能です。現場では、入力の手間が1つ増えるだけで使われなくなります。最初は「確認して登録ボタンを押す」程度の操作に絞り、慣れてから対象を広げるのが定着のコツです。
まとめ
- 経済産業省の調査では、2025年のBtoB-EC化率は45.9%で、部品加工・金属加工に近い業種でも半分前後まで電子化が進んでいます。
- 受発注デジタル化は「経路と件数の把握 → 取引先ごとの受け口選び → 受注データの集約」の順で進めると、無駄な投資を避けられます。
- FAX注文はAI-OCRで自社側から電子化できますが、品番・数量・納期の確認は人が担う設計が欠かせません。
DGテクノ株式会社は、受発注を含む業務の整理から、Odoo ERPの導入、AI-OCRなどの業務自動化、稼働後の運用までを支援しています。まずは1社・1経路の小さな改善からご相談いただけます。サービスの詳細はOdoo ERP 導入・運用とAI・業務自動化をご覧ください。
受発注と販売管理の仕組みを見直したい方へ:Odooのご相談フォームから承ります。
まだ検討段階の方へ:製造・建設業のDX導入事例集(無料)
この記事を書いた会社
DGテクノ株式会社(東京・新橋)は、製造業・建設業を中心に、AI活用・Odoo ERPの導入と運用・AIネイティブなシステム開発を、構想から運用まで支援しています。Odoo Learning Partner。
